
北米最大の家庭用品見本市である「ジ・インスパイアードホームショー」が3月2日から4日にかけての3日間、イリノイ州シカゴのマコーミックプレイスで開催された。同展は今年で125回目となる歴史ある展示会。主催はインターナショナルハウスウェアアソシエーション(以下、IHAと表記)。今年も3万人ちかいバイヤーが来場し、世界から集結する家庭用品の新製品を吟味した。
同展の最大の特長は、住宅に関連するあらゆるジャンルの製品を取り扱う点。具体的には、浴室用品、清掃用品、調理器具、ホームデコ、一般家電、収納、調理家電、カトラリー類、キッチン用品、旅行用品、ペット用品、サステナブル製品、テーブルトップの、全14のカテゴリに分類され、北米を中心に、カナダ、中国、東南アジア各国、欧州から出展企業が集結、老舗からスタートアップまで混在する、いわば「企業のるつぼ」状態であり、全部で1600社を超える規模となった。なお日本からは、収納の天馬やアイリスオーヤマ(米国関連会社であるIRIS USA,Inc.)が出展した。
インターナショナルソーシングエリアでは中国と台湾を中心に、OEMを得意とする500以上の企業が出展した。また、香港貿易発展局が主催とするライフスタイル展の出張出展や、インドのデリーフェアを主催するEPCHの出張出展など、他国の同ジャンル展のPR出展もあった。
初日の夜、今年で25年目となるグローバルイノベーションアワーズ(以下、giaと表記)の表彰式が行われた。giaは製品部門と販売店部門の2つで構成され、前者は機能の創造性や革新性、そしてデザインに優れた新製品を表彰するプログラム。毎年展示会開催前に募集が行われ、開催1カ月前までに、前述の14のカテゴリでそれぞれ5社の最終候補が絞られる。最終候補にノミネートされた企業は審査員へのプレゼンと面談を経て、展示会開催初日の夜、表彰式でカテゴリ毎に最優秀製品が選出される。
販売店部門は、全世界に存在する31のスポンサーの推薦によりノミネートし、製品部門と同じく審査員へのプレゼンや面談を経て優秀店が選出される。日本からは繊研新聞が長年スポンサーを務め、今年はバルミューダの直営店を推薦、優秀店としての受賞も果たした。メーカーの直営店が選出されるのはこれまでにない事例で、同社のコンセプトやディスプレイが大きく評価された形だ。
開催二日目には、来場者と出展企業が交流するパーティ「ネットワーキングアフターダーク」が、展示会場のグランドボールルームで開催された。
最終日である三日目には、海外バイヤーを中心とした「シカゴリテイルツアー」も開催された。これはシカゴ市内の著名な販売店であるターゲットやウォールマート、ウィリアムソノマといった店舗を巡る見学会だ。
IHAのPiritta Torro氏は本紙の取材を受け、「日本のバイヤーはもともと少なかったが、コロナ以降円安が加速し、来場減がますます目立つようになった。日本市場には多機能製品や高付加価値商材を受け入れる価値観が存在しており、是非来場してビジネスにつなげて欲しい」と語る。事実、多くの出展企業は日本の販売店や商社とさえ取引がない。経済大国で、高付加価値商材への理解がある日本の市場は彼らにとっても魅力的にうつるが、販売の取っ掛かりがない状態だ。ホームリビングでは次号以降、gia最優秀製品を中心に日本市場でも検討に値すると考えられる家庭用品を連載で紹介していく。
バイヤーのブース誘導など、工夫随所に
同展の開催規模は大きく、3日間で全ブースを訪れることは難しい。一方、主催者側もこういった大規模展ならではの弊害を認識しており、バイヤーが効率的にブースを巡ることができるような工夫が随所にみてとれた。
まず、北館と南館で展示する製品種別を2つに大別した。またOEM受注を得意とする約500社に及ぶ中国並びに台湾企業を、インターナショナルソーシングエリアという別ゾーンに集結して区分けを図った。いずれのエリアも出展社番号毎に企業が並び、目当てのブースにたどり着きやすい配列がなされている。
また、バイヤーズクラブという来場者向けの休憩スペースが2か所用意され、いずれも出展製品の中から、注目の新作を多数参考展示している。会場の入り口には前述のgiaで優勝または、最終選考まで残った70の製品が展示され、どこのブースに実物があるか一目でわかるようになっていた。giaに残った製品はいずれもあらゆる分野のプロにより選定され、評価された機能的にもデザイン的にも斬新な製品ばかりであり、何から吟味すべきか悩むバイヤーを導く役割を果たしている。
また、初回の来場者にもわかりやすいよう、各所にインフォメーションセンターが設けられ、専任のスタッフが配置されている。スタッフはセミナーやブースの場所、エリアの案内から乗るべきシャトルバスまであらゆる情報を網羅しており、広大な展示場をスムーズに利用できるよう工夫が随所に施されていた。