
スウェーデンハウス(東京都世田谷区、村井秀壽代表取締役社長執行役員)は、「オリコン顧客満足度®調査 ハウスメーカー 注文住宅」において、調査開始年の2015年「第1回」より11年連続で総合1位を獲得し続けている。同社の大川保彦取締役に、人気の秘訣や、今後の展望について聞いた。
スウェーデンハウスは1984年の創業で、今年41年目を迎える中堅ハウスメーカーだ。創業当初は19名からスタートした同社だが、2025年2月時点では762人の従業員数まで拡大。創業から累計で約4万棟の引き渡し実績を持っている。沖縄を除く全国で販売展開を行っており、北陸地方のスウェーデンハウスパートナーズシステム(SPS)以外は全て直営だ。
スウェーデンハウスの親会社は、株式会社トーモクだ。段ボールメーカーで、戦前より北海道の小樽において、缶詰を入れるための木箱を作る工場を操業していた。トーモクの前身企業は戦後の1946年、モデルハウスを八重洲に展示。木工技術を活かし生産したプレハブ工法の戦災復興住宅として注目を集め、1948年に炭鉱入植者用住宅を製造するまでに至った。
1954年、台風による道内森林資源の壊滅的被害を受け、1960年代に石狩地区に木材コンビナートの建設構想が起こる。1970年代にこの石狩湾新港地域開発が国家プロジェクトになると、将来予測される住宅需要に対処すべく、「世界で一番住みやすい家を日本で建てたい」との考えを抱いた、のちのスウェーデンハウス創業者は医療や住宅の先進国であるアメリカや北欧諸国を視察、スウェーデン住宅と出会った。スウェーデンは福祉先進国として、子どもから高齢者まで誰もが住みやすい住宅が求められ、良質な木材資源を活かした高気密、高断熱、高耐久な住宅が造られていたという。
この経験を受けて、スウェーデンの風土と似た石狩郡当別町に住宅地とゴルフ場、スウェーデンとの交流拠点を建設する「スウェーデン村構想」が起こり、今も販売を続ける住宅地「スウェーデンヒルズ」に結実。スウェーデンハウスのはじまりとなった。
スウェーデンハウスの事業理念は
スウェーデンの住思想による本物の住まいを
美しい日本の文化と風土に調和させ
より豊かなライフスタイルを提案し
品質第一の施工でお届けすることで
資産として価値の持続する家づくりを実践します
というもの。日本より北に位置するスウェーデンは長く暗い冬が続くため、家で過ごす時間が必然的に多くなることから、家の中でどれだけよい暮らしをするかが重要なのだという。
スウェーデンハウスの大川保彦取締役は
「住まいを楽しむことについて、スウェーデンをはじめとする北欧諸国の人々は非常に長けています。そのようなライフスタイルを日本の方々にも提案し、住宅への意識を変えることが、当社の役割の一つでもあると思っています」と語る。
同社は「オリコン顧客満足度®調査 ハウスメーカー 注文住宅」において調査開始年の2015年「第1回」より第1位を獲得し続けているが、「資産として価値の持続する家づくりを実践する」という考えで、6つのポイントに重きを置いた住宅づくりに取り組んでいる。
一点目は「スウェーデンの良質な木材の使用」だ。
「日本で一般的な住宅に使われている木材の樹齢は30年程度が多いですが、スウェーデンの木材は、樹齢30年ではまだ“庭木”レベルの太さにしか成長できません。日本で使用されている木材は、短期間で伐採できるため効率がよいと言えますが、木は「伐採時の樹齢」が「耐用年数」だと言われます。なおかつ、昨今、居住空間には気密性や断熱性といった密閉性が求められるようになり、壁の中に湿気がこもって結露が起きても、適切な通気を確保しない限り、水分を逃がすことができずシックハウス症候群や腐朽菌が発生する原因になってしまいます。日本の家の寿命が平均で30年ほどと言われているのは、このような背景があります」と大川取締役は話す。
同社で使用する木材は、樹齢80年前後の材を使用している。大川取締役は
「長く住み続けられる家づくりにおいて、木材に必要な要素は、まず年輪が詰まっているかどうか。そしてもう一つは、その木をしっかりと乾燥させ、建てた後も乾燥した状態を保つことが重要です」と話す。同社では、日本の気候に合わせた通気工法を採用し、壁の中の湿気や、わずかに侵入した雨水を逃がしている。これにより、木造住宅でも安心して、世代を超えて長く住み続けることができる。また、「木質パネル工法」を採用し、壁パネルはスウェーデンの現地工場で生産したのちに輸入している。

結露などによる室内環境への影響を緩和するのが、2番目のポイントとなる「木製サッシ3層ガラス窓」だ。スウェーデンの現地工場「トーモクヒュースAB」で2002年から生産されているこの窓は、木製の窓枠と3層ガラス(4㎜Low-Eガラス+中空層(アルゴンガス)12㎜+4㎜ガラス+中空層(アルゴンガス)12㎜+4㎜Low-Eガラス)で構成されており、約180度回転することも特徴。屋外の窓枠は約5年に一度保護塗料を塗るだけでよく、冬の窓辺に発生しがちな結露のふき取りも無縁だ。
「木製サッシ3層ガラス窓」は防火性能も備えており、万が一室内で火災が発生した場合でも屋外への延焼を防ぎやすい構造となっている。
「当社の木材は年輪の幅が詰まっており、万が一の火災があっても、表面が燃えることで燃焼の進行をおさえる炭化層ができ、木の内部まで火が届きません」(大川取締役)。消防士などの職業に就いているオーナーも少なくないという。
3点目のポイントは「耐震性能」だ。独自のモノボックス®構造により地震の揺れを面で支えることで、衝撃を全体に分散し、高強度を実現している。家が歪みにくいため、地震が起こった後でも安心して住み続けられる構造だ。

4点目は「高気密・高断熱」だ。同社では「全棟高性能保証表示システム」を1999年から実施し、一棟一棟の断熱性能(熱損失係数:Q値および外皮平均熱還流率:U値)の計算値と気密性能(相当隙間面積:C値)の実測値を顧客に表示して引き渡している。全棟で気密測定を実施するハウスメーカーはほとんどないという。
5点目は「ワングレード・ハイスペック」だ。創業当初の引渡し1棟目から今日引渡す住まいまで、ワングレードで建築している。
「当社は40年前から高気密・高断熱を追求しており、ほぼスペックが変わっていないので、40年前にお引渡しした住宅の窓と、近年お引き渡しした住宅の窓の基本的な性能やデザインがほとんど変わらない点が特長です」(大川氏)。他社のケースでは、引渡し後から時間が経つにつれ、規格やスペックが変更となり、交換が困難となる場合がほとんどだが、スウェーデンハウスでは40年前の窓も問題なく交換できる。長く住み続けるというコンセプトのもと設計されていることが、この点からも垣間見える。
6点目は「長期アフターサービス」だ。日本の家の平均的な寿命が約30年とされているなかで、スウェーデンハウスは「50年間無料定期検診システム」を2000年から開始した。
「お引渡しから10年の間は定期的にお伺いし、その時々に発生しやすい不具合箇所を中心に点検しメンテナンス箇所のアドバイスを行います。11年目~50年目は5年おきに点検します。体の健康診断と同じように、問題が出てきた場所に必要なメンテナンスを行うことで、お客様をしっかりサポートします」(大川氏)。

スウェーデンハウスは、切妻屋根スタイルの「グラン」、寄棟屋根スタイルの「リンド」、ダイナミックな大屋根スタイルの「アルム」、平屋スタイルの「ビヨルク」などのデザインを展開している。注文住宅の印象が強いスウェーデンハウスだが、規格住宅にも対応しており、屋根付きアウトドアリビング「ルフトデッキ」のある平屋住宅「レットナード」や、若い世代をターゲットにした「SAKITETE(サキタテ)」もラインナップしている。
内装について大川氏は
「スウェーデンならではのスタイルや、日本の要素を取り入れたものなど、多様なラインナップを選択いただけるようにしています。特に当社を選ぶお客様は、女性を中心に、北欧デザインへの憧れをお持ちの方が多い印象です」と語る。なお内装については、グループ企業の北洋交易がコーディネートを手掛けている。スウェーデンハウスの顧客年齢層は、主に40歳前後が最も多く、60代や70代も増加傾向にあるという。近年は打ち合わせが容易な点から、前述の規格住宅タイプの人気も高まってきている。
時代の流れに左右されない美しさと新鮮さを持ち、高いデザイン性が人気のスウェーデンハウスの住宅だが、同社では家具のコーディネート提案および販売についても、今後の伸びしろの部分として捉えている。ハウスメーカー共同でのインテリアフェアなどによって売上も拡大しているため、今後はよりコーディネート提案を強化し、さらなる顧客満足度向上につなげていく。
(佐藤敬広)